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根管治療で痛みが取れないと抜歯しなければいけないか?

院長ブログ

ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。

今日は、痛みが根管治療をしてもなかなか取れない場合、抜歯しなければいけないか、についてお話しします。

結論からいうと、根管治療をしているけど痛みが取れないからといって、必ずしも抜歯をしなければいけないわけではありません。

あるケースを例にお話しします。

患者さんは、40歳女性。
根管治療をしているけれども痛みが取れないから、抜歯した方が良いと前医に言われたそうです。しかし、患者さんは抜歯を避けたいため、ももこ歯科に相談で受診されました。

歯周ポケットが限局的に6mmあり、歯肉の腫脹も認めます。私の診断としては、根尖性歯周炎、歯内歯周病変、穿孔、歯根破折で、治療はいずれの場合も根管治療を行いながら診断も同時にしていきます。しかし、根管治療中に歯根破折が見つかった場合は、根管治療を中止し抜歯します。

この歯の場合、私が提案した治療方針は、①根管治療 ②抜歯 ③投薬です。投薬は、一度は状況が好転しますが、永続的ではありませんからおすすめしません。抜歯はありだと思います。理由は後の考察で記します。しかし、患者さんは、抜歯を避けたいからももこ歯科を受診したので、②③は除外され、①根管治療を選択しました。

この患者さんは、ルールを遵守した根管治療を行っている最中に痛みは取れ、歯周ポケットは3mmと改善し、歯肉の腫脹も消失し、経過良好で、現在かぶせ物をセットし終わったところです。根管治療中に痛みが取れたことを証明するように、矢印の先にある黒い影(根尖病変)は縮小しています。

最終的には、歯根破折や穿孔はなく、患者さんが痛かった原因の病気は、根尖性歯周炎でした。

術前術後レントゲン比較

ルールを遵守した根管治療を行えば痛みが取れるかもしれません。
もし、ルールを遵守した根管治療でも痛みが取れなければ、歯根端切除術を行います。

ここで、2つの問題を提起します。

1.なぜ 痛みが改善したか?

前医も根管治療を行なっているのに、痛みが改善しなかった理由は、根管治療のルール=基本コンセプトを遵守しているかどうかが、重要なポイントです。
このケースの場合、拡大操作を行うことはほぼできず、次亜塩素酸ナトリウムの抗菌効果が功を奏して痛みが取れ、根尖性歯周炎が改善したようです。2回目の治療時には痛みが取れ、歯肉の腫れもひきました。
きちんとルールを守った根管治療を行なっていれば取れるはずの痛みは取れます。しかし、ルールを遵守している根管治療を行っているにもかかわらず、痛みが取れない場合は歯内療法外科という手法に切り替えます。痛みが取れないから根管治療をいつまでも続けることはせず、方法を変えて歯内療法外科を行います。

基本コンセプトをより詳しく知りたい方は、このブログを参考にしてください。
根管治療をするために何回も通院しているのに一向に痛みが改善しないで悩んでいらっしゃる方は必読です。胸のつかえが取れます。

https://momoko-dc.com/category/endo/concept/

2.かぶせた後の耐久性は?

一般的には、根管治療で痛みを改善できなければ、歯根端切除術を行いますが、このケースの場合、歯根端切除術を行うと、痛みが取れたとしてもより歯冠歯根比が悪くなり、長持ちするとは限りません。
歯冠歯根比とは、下の図に示すように、歯冠の長さと歯根の長さの比です。

歯冠歯根比

歯根は骨の中に埋まってる部分、歯冠は口の中から見える部分です。たとえば、木は土に埋まっている根が深く長い方が、根が短い木よりも倒れにくいですね。歯も同様で、歯根は長い方が短い歯よりも耐久性はあります。

歯根端切除術

上の図は、歯根端切除後の歯冠歯根比を示します。
黄色い部分はかぶせ物を入れた場合を想定しています。歯冠比を1とすると、歯根比が1.2〜1.3くらいです。歯根端切除術を行なうことになっても、最終的にはかぶせ物を入れられるでしょう。
歯冠が1だとしたら、歯根は1より長ければかぶせても大丈夫かな、という状態です。
歯の耐久性と歯冠歯根比は、相関します
詳しく知りたい方は、以前のブログを読んでみてください。

歯をもたせるための、豆知識〜その3 虫歯編①〜

歯根端切除術を行うと歯冠歯根比は悪化するので、耐久性を期待できるかわかりません。よって、初診の時点で抜歯を視野に入れても良いのです。もし、根管治療後に痛みが取れず、歯根端切除術を行なっても歯冠歯根比が良好で耐久性を期待できる歯であれば、抜歯を第一選択として考える必要はありません。

痛みを取ることは歯内療法で可能ですが、痛みが取れても長持ちする歯かどうかは別問題です。

以前のブログでもお話ししましたが、根管治療をしても痛みが取れないから抜歯を決断するのは時期尚早です。しかし、将来的な展望を考えて抜歯を選択することも間違ってはいません。

歯を残す治療と抜歯の選択について、トレードオフ点はどこにするか、ももこ歯科では患者さんと相談しながら決めていきます。

以上となります。

次のブログもお楽しみに。

(1)歯内歯周病変:根尖性歯周炎と歯周病が併発している病気。
参考ブログ:https://momoko-dc.com/blog/988-2/

⑵歯根破折:歯にヒビが入っている場合
参考ブログ:https://momoko-dc.com/blog/1084-2/